【ネタバレ注意】映画「この世界の片隅に・さらにいくつもの」の感想。

2016年12月30日

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映画「この世界の片隅に」を見に行って来ました。

 

原作は、こうの史代先生の漫画です。

監督・脚本は、片渕須直監督。

 

とんでもない作品ですので、必ず見て頂きたいです。

まだ見ていない方は、今すぐ劇場へ。

 


【ネタバレ注意】

続きに、映画「この世界の片隅に」を見た感想を書いています。公開直後ということもあり、まだ見ていない方にとってはネタバレになってしまうかも知れませんので注意してください。ネタバレが気になる方、「この世界の片隅に」の内容を知りたくないという方など、絶対に続きを見ないでくださいね。

 

【追記】

2019年12月20日に、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を見に行ってきました。一番最後に感想を追記しております。

 

 

この世界の片隅に

「この世界の片隅に」公式サイト

「この世界の片隅に」公式ツイッター

 

 

「この世界の片隅に」の感想。

 

公開初日に観に行きました。

原作を読み、先日、2回目の鑑賞を終えました。

 

感想を書くまでに、こんなに時間が経ってしまったのは、この作品をうまく受け止められなかったからだと思います。

 

感動もしましたし、泣きもしました。

ですが、それではない何かが自分の一部となり、今も、うまく考えをまとめることができず、ふわふわしています。

 

今は、すずさんが笑ってくれていたらそれでいい、とそんな風に感じています。

 

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主人公のすずさんは、広島に住み、呉に嫁ぐ若き乙女です。

戦争の足音が忍び寄る中、普通の営みを続け、生きています。

 

戦争を題材にはしているのですが、それが主ではないです。

日々の営みのごとく、物語は淡々と進みます。

 

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僕自身、あまり戦争映画が得意ではなく、避けていた所があります。

その言いようのない後ろめたさを、いつも心のどこかで感じていました。

 

しかし、だからこそ、その弱さこそが、この作品に出会わせてくれた唯一の感情なのだ、とも今は感じています。

 

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この作品が戦争映画かそうで無いかは、僕には分かりません。

しかし主人公、すずさんの生きる姿を真摯に追い続けたフィルムの一つとして、後世まで多くの人々の記憶に残る作品である事は間違いないと思います。

 

戦争映画という括りではなく、戦争を含む、自らの日常を淡々と記憶の片隅に残そうとした作品なのかも知れません。

 

戦前の生活、空襲が始まり、敗戦、そして戦後へと日常は淡々と続きます。

すずさん達はそんな日々をひたすらに、食事をし、眠り、恋をし、愛し、泣き、笑い、怒り、途方にくれ、負け、屈し、歩き、生き続けるのです。

 

足りないものばかりの日々を、どうにかこうにか、周りにあるものを何でも吸収しようと奮起します。

悲しみが覆いかぶさろうとしても、それをも吸収し光を探そうと奮起します。

 

言葉とは違う裏腹な気持ちを自ら察した時も、それをも吸収し抱きしめ愛を確かめようと奮起します。

何もかもを失った時も、人間の根源を確かめ、残されたものの生きる意味を知ろうと奮起します。

 

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同時に僕は、この映画を見て、自らの言葉の無力さ、自らの無力さを痛感いたしました。

 

仮に、戦争という怪物がこの作品を生み出したのなら、僕はそれをどう言葉にすべきなのか分かりません。

こんな得体のしれない怪物のような作品が生み出された事実を、僕は、どう言葉にすべきなのでしょう。

 

怪物が何百万人何千万人もの命を消し去った前では、言葉なんていらないのだ、とあなたは言うでしょうか。

怪物が怪物を生み出したに違い無いのだと、あなたは言うでしょうか。

 

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それでも、絵を描く事と同じように、言葉を紡ぐ事も、自らを彩る事に繋がるのだと、あなたは言ってくれますか。

あの空に見えた彩りが、何年経った後も僕の言葉の節々を彩り、未来をも彩る事に繋がるのだと、あなたは信じてくれるでしょうか。

 

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すずさん達は、生活をする中で様々な事実に直面し、真摯に自分と向き合おうとしていました。

その彩りは、あの日の空と同じく、戦争という悲しみの怪物をも飲み込もうと、今も、もがき続けているのだと思います。

 

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僕自身は、物が無かったり、暴力に屈したり、悲しみに覆われたりするという理不尽な事実をいつも感じている訳ではありません。

しかし、戦争という体では無いにせよ、それらがまたこれからも繰り返し何度も起こり得る事は、ちゃんと理解しているつもりです。

 

その時、自分はどう生きればいいのかまだ答えは出ていません。

しかし、この作品の登場人物たちのように、時に全力で、時に軽やかに、生きて行く知恵を絞り続け、日常を満喫し生きてみようと今は感じています。

 

ユーモアを忘れなかった登場人物達に何度も救われたように、ユーモアを忘れず、半径数メートルの世界を大切にし、互いに声を出し続けたいと思います。

 

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この先、例え悲しみが僕を繰り返し押さえつけようとも、すずさんがそうしたように、すべてを食べ尽くす勢いで感情をむき出しにして怒り、地を這いつくばってすべてが水に還るほど涙し、空気が壊れるほどに誰かを抱きしめ愛し、世界が震撼し驚愕するほどに心の底から笑っていたいと思います。

 

日々の生活の中で僕が笑っていられるのは、誰かが今日も笑ってくれていたからなのでしょう。

僕はそれをもう一度、ちゃんと心の片隅に留め、日々の彩りを敏感に感じる心を取り戻したいと思います。

 

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悲しみも僕の一部として、あの空に解き放ちたいと思います。

愛や笑顔や美しさも僕の一部として、あの空に解き放ちたいと思います。

 

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僕は、この世界が悲しみで出来ている事を理解しているつもりです。

僕も左手で描いた絵のように、歪んでいるのかも知れません。

 

いや、人間なんてみんなどこか歪んでいるのでしょう。

 

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しかし、その様々な彩りがいつか、悲しみの怪物をも飲み込み、この世界がそれだけでは無い事を僕に教えてくれるのだと思います。

この世界の片隅に生きる小さな小さな僕の所にも、あの空の彩りでいっぱいになった日常が舞い降り、僕を生かし続けてくれるのだと思います。

 

その時、僕は自分自身の右手を大きく振り、おかえり、と一言付け加え、その日一番の笑顔で迎え入れたいです。

この世界が悲しみで出来ていたとしても、それも、この世界の一部なのだと理解し、僕はその、もはや淡々とした日々の営みを、笑顔も涙も連れて一緒に乗り越えて行く事が出来るのだと、信じていたいです。

 

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クラウドファンディング

 

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▼参加させていただいたクラウドファンディング「片渕須直監督による『この世界の片隅に』(原作:こうの史代)のアニメ映画化を応援」- Makuake公式サイト

https://www.makuake.com/project/konosekai/

 

 

映画の最後の最後、エンドロールに僕の名前がありました。

リンさんの記憶は、僕をも彩ろうとしてくれたのかも知れません。

 

クラウドファンディングに協力させて頂いたのは、もちろん、自らの意思だから覚えておりました。

でも、何だか凄くビックリして、だけど、何だか申し訳ない気持ちで一杯になりました。

 

何故なら、エンドロールに名前を載せていただくほど、僕はこの作品に、この世界に、協力出来ているとは思えなかったからです。

 

でも、僕はそれを見た時、凄く衝撃を受けました。

同時に、自分のやるべき事ってこれだったのかも知れない、と体が勝手に理解し反応し認識するのが分かりました。

 

自分のやるべき事がやっと、やっと分かった気がしたんです。

それは、ずっとずっと何十年も悩んでて答えなんて無いと思っていた事でした。

 

だから、今は、僕の中にも誰かの一部が存在しているのが、少し分かり始めて来ました。

それが、誰かの器であり続けるという事なのかも知れない、と今は感じています。

 

すずさんが見た爆弾彩るあの空が、今、僕が見ているこの空にも続いているのが、はっきりと見えました。

はっきりと、見えたんです。

 

そして、『この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう』と伝えるすずさんの横顔の美しさも、今、殺風景な僕の部屋、そんな、この世界の片隅にもちゃんと続いているのだと、今はちゃんと理解できます。

この世界のすべてが、巡り巡って最後、あの女の子を守ったように、僕にも圧倒的な日常の繰り返しがそこにあってくれるのです。

 

地続きの現実が、圧倒的な現実が、僕を生かし続けてくれるはずです。

 

しかし、でも、やっぱり僕は弱い人間です。

誰かを失ったと理解した時の絶望感を、今もまだ、後悔の一文字で表す事は出来ません。

 

しかし、でも、それでも、今、自分が何をやるべきかを見失ったときの道しるべに、その誰かの笑顔が必要なんだと思います。

僕も、その誰かや何かのためにも、ずっと、笑ったり泣いたりしながら、生きていこうと思います。

 

僕には、まだ、両手と両足があります。

 

僕にもまだ、できる事があるのかも知れません。

 

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「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の感想。

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

 

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を見に行ってきました。

傑作です。

 

前作の題名の間に(さらにいくつもの)が入っているのは、すずさんだけじゃない、様々な登場人物の内面がえぐり出されているからだと感じました。

リンさんの言葉の一つ一つが響いてしまって、今もまだ揺れ続けています。

また、ゆっくり見に行きたいと思います。

 

それから、最後の最後のエンドロール、素晴らしすぎて、どうにかなりそうでした。

 

ただ、まだ、ふわふわしており、感想がうまくまとまらずにいます。

とにかく、さらに強烈で、繊細で、美しい作品になっていて、心底びっくりしました。

 

長さは全く感じません。

前作のテンポの良さは、本作の追加シーンの美しさのためのものだったと思えるほどです。

 

主にリンさん絡みのシーンが追加となっておりますが、素敵すぎます。

前作とは、全く違った作品に見えます。

 

ただただ、素晴らしいの一言です。

多くの方に見ていただきたいです。

 

パンフレットもオススメです。

 

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

 

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最後に、まとめと感想です。

終始、まとまりのない感想になってしまい、申し訳ありません。

でも、自分の中では揺るぎ無い何かが、確実に宿って行くのを確かに感じています。

 

それを、うまく言葉にできないもどかしさを、そのまま、自身の右手に当てはめて筆を取った次第です。

 

こうの史代先生、片渕須直監督、監督補の浦谷千恵さん、作画監督の松原秀典さん、美術監督の林考輔さんを始め、アニメーションスタッフの皆さん、関係者の皆さん、素晴らしいお芝居ですべてを圧倒し尽くしたのんさん(能年玲奈さん)、丁寧なお芝居で物語を導いた細谷佳正さん、小気味良いお芝居で物語を広げた小野大輔さん、リンさんに永遠の命を宿した岩井七世さん、他声優の皆さん、音楽のコトリンゴさん、本当に素敵な映画をありがとうございました。

 

『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、今後も僕を彩り続け、僕を生かし続けてくれる、僕にとって一生忘れられないであろう大切な作品となりました。

 

気が早いかもしれませんが、次回作も、とっても楽しみにしています。

本当に、ありがとうございました。

 

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おさらい

■「この世界の片隅に」公式サイト
http://www.konosekai.jp/

■「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」公式サイト
https://ikutsumono-katasumini.jp/

■「この世界の片隅に」公式Twitter
https://twitter.com/konosekai_movie

■片渕須直監督のTwitter
https://twitter.com/katabuchi_sunao

■のんさん(能年玲奈さん)のTwitter
https://twitter.com/non_dayo_ne

 

 

■原作漫画も是非。

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■自分は、片渕須直監督の「マイマイ新子と千年の魔法」という映画が大好きだったので、クラウドファンディングにも参加させていただきました。まだご覧になっていない方は、ぜひ見てみて下さいね。

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